エッセイのネタのほとんどを、私は日常の中から探している。もちろん「エッセイに書いて面白いネタ」と「書いてもあまり面白くないネタ」とがある。面白いものを41。
つまり君は、自分が書くエッセイは全部面白いと言いたいのかね?という声が聞こえるので、さらに説明すると、面白いかどうかは、まずは「自分にとって」である。自分にとって面白いとはどういうことか。それは私の場合、「自分がそれまで知らなかったこと」を書く、42。
知識というよりは感覚や感情であることが多い。今まで見えなかったものが見えたとき。同じ場所なのに違う場所のように感じられたとき。ずっと眠っていた記憶。思いがけない嬉しさや悲しさや淋しさ。不意に自分の中に生まれた、世界というものへのあらたな認識。
春になったら暖かくなるとか、困っている人には親切にしたほうがいいとか、不倫はしないほうがいいとか、梅に鶯とか月に雁とか、すでに知っていることは、いくら上手に書いてもつまらない。このエッセイの、665文字という短さの中ですら、書いている途中で退屈になってきてしまう。
エッセイにかぎらず、43でもそうだ。理想を言えば、知らないことを「知った」という報告ではなくて、この世の謎、自分自身の謎に近づいていく過程を書いていきたいと思っているし、そのような書きかたをしているときが、結局、私は一番面白いのだ。あるいはこれは書くことにかぎらず、人生全般に対して採用したいと思っている44。
41.
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