71.
小説家になりたい人には「好きな作家のものを全部読む」という読書法をすすめる。好きな、というのは、自分に合っている気がして読みやすく、しかも楽しいというものだ。
いろんな作家をちょっとずつ読む、というのでは、あまり身につくものがない。ベストセラーになっている話題作をせっせと追いかける、というのは①もっとよくない。(注1)
ベストセラーになる小説は、とりあえず何かいいところがあって売れているのだから、読めば参考になるではないかと言うかもしれないが、それを読んで参考にしている人がたくさんいる、ということなのだ。みんなが狙っている方向で、自分もやってみるというのでは、目立つこともないわけである。
(中略)
ひとりの作家(あなたにとって、不思議に肌合い(注2)がよくて楽しめる小説を書く人)の全小説を読んでみるのは、知らず知らずのうちに、その作家の「小説作法」を感じ取ることである。この人は小説を、このように構成するのだ、そこが心地(注3)いいのだ、とわかることである。この人は人間心理を、このように描写する(注4)、この人の社会観はこうである、なんてこともわかる。
②それがわかれば、似たようなものを書くところまであと一歩、なのである。特別にマネして書こうと思っていなかったとしても、書くものは自然と、その作家の作風(注5)と似たものになり、初心者が書いたにしては完成度が高いものになるだろう。
こう反論する人がいるかもしれない。小説を書いて世に発表したいという願望は、自分というものを世間に知らしめたい(注6)ということであって、つまり自己表現欲から出てくるものだ。それなのに、他人の作品をマネているのでは、自分の表現にはならないのではないか。
自己表現欲ことは、確かにその通りである。しかし、慌てないで順に段取りを踏んでいこうではないか。いきなり自分らしさを出したいと考えるのではなく、まずは世間が振り向いてくれるレベルのものが書けるよう、上達する必要があるのだ。
私の書くものには価値があるのだから、世間が注目しなければならない、と思い込んでしまう人が案外いるのだが、それではなかなか読んでもらえない。
だから、まずはうまく書けるようにならなければいけない。
そのための訓練として、ある作家を熟読(注7)しているというのは、大変に有効なのである。
(清水義範「小説家になる方法」による)
(注1)ベストセラー:ここでは、最も売れている本
(注2)肌合いがよい:ここでは、自分の感覚に合う
(注3)心地よい:快い
(注4)描写する:表現する
(注5)作風;作品に表れた特徴
(注6)知らしめたい:知らせたい
(注7)熟読する:意味を考えて、よく読む
71.①もっとよくないとあるが、なぜか。
107对77.哈哈哈哈
47:4213
已修正,谢谢指出